第70回勉強会レポート-2:午後の部

2013年11月16日 於:江東区森下文化センター 第二研修室

(午後の部) 記念勉強会/プロ会員による発表

・Community (西の果てから):DIGITABLE同人 渡邉英昭

渡邉英昭氏はヨーロッパ及びオーロラをはじめとする北欧の自然・文化など幅広く撮影を続けられている。 JPS及びAPA会員としての活動にも熱心で当会を代表するプロ側の会員である。今回も欧州での撮影を続けておられ、セミナーの前日に帰国された状況の中での発表。 今回の発表のテーマは、渡邉氏が長年撮影続けてこられたデンマーク自治領の定住人口わずか名という孤島で、夏のある時期、生活確保のため当該からの応援を得て渡り鳥の狩猟を行う物語である。 長年通い詰めて島民の信頼を得た渡邉氏ならではの作品で、厳しい生活環境と独特の風習の中暮らす島民と野鳥の闘いが、見る者の心に残る珠玉の発表となった。

記念勉強会/協力企業セミナー

・ニコンデジタルカメラの技術と変遷:株式会社ニコン 映像カンパニー 後藤哲朗講師

後藤氏は旧日本光学工業入社後、長らくカメラ設計部に在籍、さまざまな機種開発のプロダクトリーダーを務めてこられその後は、映像カンパニー開発本部長として、多くの製品開発を指揮。現在もニコン 映像カンパニー 後藤研究室として、製品や技術に関する提案を行なっており、おりしもこの勉強会当日が自ら提案、開発の主導的役割を果たしたしたNikonDfの発表当日と重なることになり、セミナー開始前から参加者の話題になっていた。

● セミナーは後藤氏の経歴紹介にはじまり、ニコン一眼レフカメラの歴史をレビュー。それぞれの開発当時のエピソードも交えて興味はつきない。さていよいよ後半はNikonDfの試用機を手に開発のコンセプトと詳細が語られた。 Dfの産みの親でもあるだけに、とうてい他では聞くことの出来ないだろう、ありがたいお話の数々…。 試用機の参加者への回覧も含みながら、講師参加者一体となった熱い発表はあっという間に終了時間となった。

・インクジェット用紙の基礎講座:株式会社ピクトリコ 亀田尚道講師

株式会社ピクトリコ 営業統括部の亀田尚道氏をは業務の傍ら数々のセミナーや各地でのプリントワークショップ等での講師活動を精力的に続けておられる。また今回の展覧会に花を添えるべく、昨年度ピクトリコフォトコンテストの優秀作品のご提供をいただいた。

● セミナーにあたり詳しい資料とサンプルが提供された。はじめは印画紙の構造の説明からで、製紙段階の説明から描写の質を左右するインク吸収層の図解説明。ブランドグレードによる再現能力の違いもよく理解できた。 また高品質なモノクロ表現のためのデジタルネガフィルムTOS100の詳しい説明。プラチナプリントを始めて耳にする参加者にもよく理解できたことだろう。また自宅では設備がない方のためのプラチナ・バナジウムプリントのラブサービスも開始されたとのこと。最後には参加者に嬉しい特典も用意されていた。

・なぜ写真を撮るのか?ー写真を見る時の体験を考えるー:白澤洋一講師:博士(工学)

白澤氏は㈱アルファシステムズに勤務され、顔画像、色彩情報などの研究を通じソフトウェアの開発に従事されている傍ら、工学博士として知覚情報処理・感性情報学などの研究者でもあり、数々の論文を発表、受賞歴もお持ちである。昨年の記念勉強会では㈱アルファシステムズでのソフトウェアの開発の立場からの講演をいただいたが、本年は個人の研究者として独自のテーマでの発表をお願いした。

● 私達は写真に囲まれて生活しているが、写真には、情報共有のために、表現のために、メッセージのために、記録のために、メモのために、説明のために…などさまざまな目的がある。 また体験はどのように形付けられるかについて、さまざまなシーンの検証が紹介された。 ところが今日では目的に応じて、それを表現するちょうど良い道具も変わるといえる。ならば写真を見る状況を考慮してデザインする必要があるだろう…という結論である。

● あらためて、DIGITABLEが通常の写真教室にはとどまらない非常にユニークな勉強会であることが、会員のみならず当日のビジター参加者にもお分かりいただけたと思われる。 盛大な拍手の中、記念勉強会は終了した。

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DIGITABLE写真技術勉強会(HOME) http://www.digitable.info
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